歯周病治療や予防は、患者様それぞれによって異なる原因・症状に合わせて行っていくことが大切です。毎日の正しいブラッシング、そして歯科医院での定期健診やクリーニングで定期的にプラーク(歯垢)内の歯周病菌を除去することで歯周病予防が出来ますが、ここまでしても歯周病を完全に予防するというのは難しいものなのです。
それでいて、歯周病は進行すれば歯を失う原因になってしまう恐ろしい病気です。だからこそ当院では予防を第一と考え、患者様に定期的な健診をおすすめさせていただいております。また、歯周病になってしまった患者様にもしっかりと原因や症状を見極め、丁寧で精度の高い治療を提供しております。
図:歯周病

成人の70%が歯周病!?
日本では、成人の約70%もの人が歯周病になっていると言われているにも関わらず、歯周病の恐ろしさを正しく理解していない人も多く、歯茎に異常が出たり出血したりして初めて歯科医院で診てもらうという方が多いのが現状です。
初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないまま症状を進行させてしまっているのです。もしも毎日しっかり歯を磨いているのに口臭がすると感じているのなら、それは歯周病の可能性があります。喫煙者は特にリスクが高くなるので定期的にチェックされる事をおすすめします。
病気や妊娠にも関係している歯周病
歯周病はお口の中だけでなく、身体に様々な悪い影響を与えます。他の病気を進行させたり、妊娠にも悪影響を与えるという事が指摘されています。一例ですが、歯周病菌が体内に流れていくと心筋梗塞や動脈硬化、脳卒中といった病気のリスクを高める可能性がり、早産や低体重児といった妊娠トラブルをも引き起こしてしまう可能性があるのです。
奥歯まで大切な歯です!
頑丈そうに思える奥歯ですが、実は奥歯は意外と寿命が短い歯だという事はご存知でしょうか。奥歯は食べ物を噛む時に重要な役割を担っていますが、何かを噛む時、なんと自分の体重とほぼ同じだけのちからが奥歯にかかっており、それだけ強い力で物を噛んでいるのです。
そのため、奥歯を失ってしまうと噛む力が大幅に減ってしまい、それに伴い食べ物の消化や吸収が悪くなってしまいます。そのほか、脳への刺激も少なくなり、認知症発症のリスクを高めるとも言われており、奥歯を失ってしまうデメリットは計り知れないものがあります。大切な奥歯を早期に失わないためにも、お口のケアをしっかり行いましょう。
大きく分けると、歯周病の病態進行は2種類あります。
- まず1つめ、「口腔常在菌で起こる歯周病」ですが、この口腔常在菌で起こる歯周病は毎日の正しい歯磨きでのブラッシング、歯石の除去などの治療を行えば症状が改善していく歯周病です。
- 2つめが「特定の歯周病菌の感染によって生じる歯周病」です。
特定の歯周病菌とは、P.g菌(Porphyromonas gingivalis)、T.d菌(Treponema denticola)、T.f菌(Tannerella fotsythia)などのことで、特にここで挙げた3種類の混合感染は歯周病を劇的に悪化させるという恐ろしいものです。
このように特定の歯周病菌が原因とっている場合にはブラッシングや歯石除去だけでの改善は見込めないため、歯周病菌を直接除菌しなければならず、場合によっては大学病院の歯周病科や歯周病専門医など、より専門医的な治療が必要となることもあります。
ニキビはアクネ菌が原因で引き起こされますが。ニキビ症に悩む方がいくら顔を洗ってもニキビが消えないのと同じで、しっかりと菌を退治する必要があるのです。現在では効果的に歯周病菌を治すため、歯周病菌の種類・数を特定し、ピンポイントで除菌するという方法ありますので、お気軽に当院までご相談ください。
歯周病菌PCR検査装置

歯周病菌の中でも悪性度の高いP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)を院内で迅速(45分)にPCR法で検出する装置です。口腔内から採取したプラークから、45分で歯周病の原因菌の一つであるPg菌を検出することでができます。
このPCRとは、新型コロナウイルスで名前として有名になりましたが、『Polymerase Chain Reaction』の略でターゲットとする遺伝子を増幅させることでそのターゲットの検出を行う技術のことです。Orcoa(オルコア)の使用目的は、口腔内の歯周病原因細菌を検出することで、適切な歯周病治療を行うことで、歯周病を防ぐことにあります。
Orcoaの主な目的
Orcoa(オルコア)によって主に次のことを検査し、歯周病の早期発見・治療。重度歯周病の治療、歯周病の悪化の防止に役立てます。
- 中程度〜重度歯周病患者の治療指針の決定、治療後の評価
- インプラント治療前のスクリーニング検査
- メンテナンス時の適期測定
Orcoaの検査方法
- 専用のブラシを歯間に通し、プラークを採取します
- ブラシについたプラークを希釈液に浸透させ、1μL取り出します
- 検出容器に入れ、装置(orcoa)にセットします
- 装置のスイッチを入れ45分で終了です
歯周病菌PCR検査Orcoaの料金
・P.g菌のみ: 4,400円
2回目以降は2,750円
※院内検査
・P.g、T.d、T.f菌の3種 (レッドコンプレックス):11,000円
2回目以降は8,750円
※院内検査
・A.a菌、P.i菌:各5,500円
2回目以降も同額
※外部委託検査
重度の歯周病に影響があると言われている菌種3種を、レッドコンプレックス(RedComplex)と言います。レッドコンプレックスは次の3種です。
- P.g菌(Porphyromonas gingivalis)
- T.d菌(Treponema denticola)
- T.f菌(Tannerella fotsythia)
これらの3つの菌は、互いに助け合い共生状態にあることが多く、これらの3つの菌が混合感染していると、歯周病は劇的に進行し放置した場合、取り返しのつかないことになってしまいます。
重度歯周病が疑われる場合には、原因となる菌が居るのかどうかを検査し、検出された場合は抗菌剤療法などを併用し、菌を居なくさせることが重要となります。
また、A.a菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)は、10代、20代で発症する若年性歯周炎で検出されることが多く、レッドコンプレックスの検査に追加で検査することがあります(外部検査機関に委託)。
それぞれの菌に関して
次の菌が検出された場合、適切な抗菌療法が必須となります。
歯周病の病原菌

P.g菌(Porphyromonas gingivalis)
レッドコンプレックスの中で最も悪性度の高い菌であり、ヒトの血液(鉄分)を栄養素としている菌です。そのため生きていくためには血液が必要となるため、タンパク分解酵素でヒトの組織、歯槽骨を破壊し、血液を得ています。
T.d菌(Treponema denticola)
運動能力を持つ菌であり、ヒトの組織内や口腔内を移動することができる菌です。P.g菌との親和性が高いと言われ、T.d菌周囲からは高確率でP.g菌が検出されます。
T.f菌(Tannerella fotsythia)
P.g菌と同じようにタンパク分解酵素を産生し、歯槽骨、歯周組織を破壊します。歯槽骨破壊が顕著な部位から検出されることが多い菌です。また、難治性歯周病の指標となります。
A.a菌(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)
遺伝的要因も考えられている菌ですが、この菌は局所免疫機能を阻害する白血球毒(ロイコトキシン)を産生するのが特徴的です。免疫機能を阻害されるため、歯周病を急速に重篤化させてしまい、若年者の重度歯周病などで検出されることがあります。
歯周病が治らない、歯がグラグラと揺れてきている、こういったお悩みをお持ちの方、このような症状が現れている場合は重度の歯周病である可能性が高いです。悪化すれば歯のグラつきはどんどん増していき、最終的には抜け落ちて歯を失ってしまいます。重度の歯周病も、適切な治療をすぐに開始すればその歯を守れる場合があります。
他の歯科医院で治療を続けているかなかなか改善しない、以前治療を受けたが途中でやめてしまったといった方は、できるだけ早くご来院下さい。当院は重度の歯周病治療を得意としておりますので、大切な歯を守るために一緒に闘いましょう。
重度歯周病の治療ではまず、歯周病になってしまった原因と現在の状態をしっかりと把握するため、様々な検査を行います。検査の内容はレントゲン、歯周精密検査、歯周病細菌検査などです。歯周病細菌検査では歯周病の原因となる病原菌がどのくらいの種類いるかを調べます。そして、検査結果をもとに診断をします。
その1:診査・診断
パノラマX線写真
全体の歯槽骨(歯を支えるための骨)、顎関節、顎骨の状態や、大きな虫歯があるかどうかを確かめます。
14枚法 デンタルX線写真
小さな虫歯まで見つけたり、歯の根や周囲の歯槽骨の状態を細かく把握するための方法です。歯全体を14枚に分けてX線写真を撮影します。
歯周病の精密検査
歯周病精密検査では、1本の歯に対し、6ヶ所の歯周ポケットの数値を測定します。歯の揺れ具合(動揺度)、歯肉の退縮具合、出血が膿が出ているかどうか、歯に汚れが着いているかなどを測定します。
歯周病の原菌検査
歯周ポケットより採取した、歯周病原菌のDNAを測定し菌の種類・数を計測します。簡単な検査で痛みを伴うこともなく、5分程度で終了します。検査結果は2週間ほどで出ます。以上の検査をしてから診断を行い、実際に治療に移っていきます。治療は「原因除去」「環境整備」「機能回復」の3段階に分け、進めていきます。
その2:原因除去
歯周病の原因となっている歯周病原菌が住み着く歯垢・歯石の除去を徹底的に行います。歯石除去や根面清掃を1日で済ませることが出来るフルマウスディスインフェクション(FMD)は1日で行うことも出来ます。歯周病原菌に対しての抗菌療法も場合によっては併用します。
重度の歯周病を引き起こす可能性のある歯周病原菌保菌者の患者様には抗菌療法とフルマウスディスインフェクション(FMD)を行うことをおすすめしております。
フルマウスディスインフェクション(FMD)とは、全顎に歯石除去と根面清掃を行う方法で、口腔全体から歯周病原菌を取ったり、歯周病原菌の再感染リスクを減らしたり出来ます。保険診療の場合だと全顎完全な歯石除去・根面清掃を行うためには最低6回は通院しないといけませんが、FMDですと1日で終えることが可能となっているので、中程度の歯周病に罹患されていて、早く歯石除去を終わらせてしまいたいという患者様にもおすすめの方法となっております。
その3:環境整備
環境整備では主に再生療法、歯周外科治療として、歯周病で溶けてしまった骨、失ってしまった歯茎の再建を行います。この治療を行うことで歯周病原菌が再び口の中に住みついて悪さをしないように環境を整えていくことが出来ます。
その4:機能回復
環境整備を終えたら機能回復の段階に入ります。補綴治療(被せ物や入れ歯)、インプラント治療、矯正治療など、患者様の症状やご要望合った機能回復のための治療を行います。きちんと機能回復の治療を行うことで、快適におしゃべりや食事を楽しんだりすることが出来るようになります。
重度歯周病の場合、以下のような外科治療を行う必要がある場合もあります。歯科医療の進歩に伴い、現在ではさまざまな治療法があります。また当院ではこれらも得意としておりますので安心してお任せいいただきたいと思います。
GBR(骨誘導再生)法
再生させたい部位にメンブレンという膜を入れ確保したスペースに自家骨、もしくは骨補てん剤を注入し、再生を促す方法です。歯周病のせいで痩せてしまった骨を再生させるために行われる治療です。
エムドゲイン法
GBR法と同じく、歯周病のせいで失われてしまった歯周組織を再生させるために行われる治療です。歯ぐきを切開し、再生させたい部位に薬剤(エムドゲインゲル)を注入し、再生を促します。ゲルなので、メンブレンとは違い後で取り除く必要がないのが特徴です。
APF(歯内弁根尖側移動術)法
歯周病のせいで歯肉が失われ、歯周ポケットが深くなってしまった場合に行われる治療です。ただ歯肉を切り取って歯周ポケットを浅くするだけでは角化歯肉(必要な硬い歯肉部分)まで失われてしまうため、APF法で角化歯肉を維持しながら増加を促していきます。
FGG(遊離歯肉移植法)法
角化歯肉(硬い歯肉)を上顎の口蓋から切り取り、必要な部分に移植という手術のことです。角化歯肉がないとブラッシングの際などに柔らかい歯肉部分が傷ついてやせてしまい、歯周病悪化の原因となるため、それを防ぐために行われます。
CTG(結合組織移植術)法
上顎の口蓋から結合組織を切り取り、歯肉がやせてしまった部分に移植することで歯根面を覆っている歯肉の厚みを増加させることが出来ます。
CGF再生療法
CGF再生療法は、患者さんから採取した血液からフィブリンゲル(血液凝固に関わるタンパク質)をつくり、骨造成治療の際に使用することで、骨の再生を促進させる再生療法です。自己血液由来の材料で行う再生療法のため、拒絶反応や感染などのリスクを軽減できることが大きな特徴です。
現在、歯科医療の進歩により、歯周組織再生療法で使用する歯周組織再生材料はさまざまあります。保険適用となるものもございます。当院では患者さまの症状やさまざまなご状況にあわせてご提案いたします。
エムドゲイン®
エムドゲイン®は、歯周組織再生に役立つエナメルマトリックスタンパク質を含む材料です。
リグロス®
リグロス®は、塩基性線維芽細胞増殖因子と呼ばれる成長因子で、人工的につくられたタンパク質となります。この成長因子の作用によって歯周組織の細胞を増殖させることで、失われた歯槽骨や歯根膜の再生が期待できます。※症例によっては保険適用となります。
バイオオス®(Bio-Oss)
バイオオス®(Bio-Oss)は、骨移植材料です。歯周病による骨欠損部位に応用することで、骨再生の促進を期待します。
A-Oss
A-OSSは、牛の骨を原材料とする歯科用移植材です。人の骨と最も似た多孔性構造を持っています。
バイオガイド®
バイオガイド®は、吸収性のコラーゲン膜です。骨移植材と共に歯槽骨欠損部分に使用することで、骨再生の促進が期待されます。
e-PTFE膜
e-PTFEは、フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレンを延伸加工した素材となります。体液は通過しますが細胞が通過しないため、骨再生誘導法や組織再生誘導法を行う際に、非吸収性膜として使用します。
CGF/AFG
CGF(Concentrated Growth Factor)、AFG(Autologous Fibrinogen Glue)は、患者さんの血液を使用した再生療法材料です。これらは患者自身の100%血液由来による成分であるため、体がこれらを異物として認識せず、術後の回復が早まり、治療期間が短縮されることが期待されます。
- CGFは人工的に作製されたフィブリンゲル(血液凝固に関わるタンパク質)で、ゲル状のものを「人工の膜」として使用します。これは骨造成治療において、骨の再生を促進するために使われます。
- AFGは、フィブリンゲルが作製される前の血漿(血しょう)を指します。これは骨補填材に混ぜて「代用の骨」として使用されます。